(続き)
元町駅を起点とする撮影会。高架下を背景にして彼女を撮ってみたくなった。
これまで見過ごしていたものにも目が向くようになったのは、このブログを始めたからだが、今日はシマカワマサシ氏のイラストにも触発されている。
(https://pbs.twimg.com/media/EOe_x_gVAAEU-92?format=jpg&name=4096x4096)
私の家は、ここから然程遠からぬ場所にあった。高校、大学あたりまで、元町本通より、国鉄のガード下を歩く方が多かった。寂しげな模型屋の前で決まって立ち止まっていた。或いは小さな書店にも。その店の棚の半分は新左翼系の出版物。残り半分が塚本邦夫や春日井健、中井英夫の著作、三一書房の夢野久作全集。桃源社の大ロマンの復活シリーズの色とりどりの背表紙が目立っていた。
最初の勤め先も、この駅の近くだった。仕事帰り、二日に一度は先輩方との「飲み会」があり、日本酒ばかり飲んでいた。軍国酒場で、一兵卒歌えと言われて、異国の丘を歌っていた。
しかし勤めが変わると、足は遠のいてしまい、いつの間にか、知っている店はなくなった。今回も、古い洋菓子製造所が残っているのを確認した程度。閉じられたシャッターばかりが目立っていた。聞くところによると、JR西日本が店側との借地契約更新を拒んでいるらしい。いずれ消えていくことになるのだろうか。
若い女性が独りで歩くのが難しくなると、街は急速に衰えていく_と聞いたことがある。
しかし、だからと言って、新しくても余所余所しい街に、人が戻ってくるかと言えば、そうでもないだろう。
何か忘れ物があるのに思い出せない気がしている。その上、それが今になって急に、自分にとってひどく大切だったもののように思えてくる。
上はこの日最初にJRの改札口で撮ったもの。
若い頃の記憶のどこを探しても、彼女のような人と言葉を交わした思い出はない。それでも無性に懐かしい気分になるのは何故なのか。
せっかくの機会だから、薄暗い街角ばかりではなく、予定を変更して、ヨソイキの顔をした神戸の街も、撮ってみたくなっていた。