(続き)
元町高架通商店街から少しばかり南へ歩く。
かつて市電が走っていた電車道。市電の揺れに身を任せながら見ていた風景を思い出す。古い建物の幾つかは今も残っていて、市営地下鉄海岸線みなと元町駅の一番出口になっているものは、その一つ。東京駅丸の内駅舎等の辰野金吾による設計だと聞く。しかし震災によって倒壊。現在は外壁だけ残されている。裏に廻れば、高層マンションの化粧壁同様の存在になってしまっているのが見てとれる。それでも無くなってしまうよりはまだマシなのだろう。市電が廃止されてから、この通りに来ることは滅多にないのだが、ヨソイキの神戸を考えていて、頭に浮かんだ。
撮影を始める前に、み さんにはC.L.Moor の小説 Vintage Season の概略を伝えている。何気ない日常が、実はとても貴重なものなのだが、その時間の只中を生きている者には本当の値打ちが分からない。今日の撮影は、過去の出来事として何が起こるのか理解している未来人の目線で…と頼んだつもりだ。
最初の画像は、その応えなのだと私は勝手に思っている。