(続き)
晴れた日に赤い雨傘を開いてみたくなった。
しかし夏炉冬扇。私が差してみたところで気の触れた男にしか見えないのだが、この美しい人はいとも軽やかに、冬空に開いてみせてくれた。
この日、前日の雨は上がり、冷たい風の吹く一日だったが、流れていく雲の端から青空と太陽が覗いていた。人形撮影のために用意していて一度も使ったことのない赤い傘。雨に濡れると小さな花弁模様が浮かび上がるように出来ているらしい。そんなことを教えてもらいながら、灰色の街の中で、私がそれを開いてみるさまを想い描いてみた。どう考えてもあり得ない光景に、ただ笑うしかなかった。
この回はウォーミングアップ。私の好きな人形のように表情を消してくれてはいるが、すぐに何かを演じてくれるし、生き生きと動き始めてくれる。