(続き)
レトロビルの非常階段にて。
歩くと音のする鉄の階段。擦り減った滑り止めの輝きが妙に美しい。
この狭い空間には、3階から1階まで窓がない。古めかしい黄色の明かりに浮かび上がるダークグリーンとクリームイエロー。むしろ暗がりの存在を意識してしまう。
カメラモニターの中の彼女は古風な人物画のようにも見えるのだが、時折、目線をこちらへ向けてくる。その衝撃の強さ。予め考えてきた撮影の意図など何処かへ吹き飛んでしまう。並んでいる画像は等身大ドールや球体関節人形のブログと何ら変わらない。目の前の美しい存在に見呆けてしまって、ただ同じようなスライドを繰り返していた。