帰りがけ、少し遠回りして、梅田で降りた。
芝田町画廊、八太栄里個展「在りし日の標」を見るためだった。
(続き)
阪急梅田駅西側の、この辺り、東側に比べると馴染みがない。
高い建物に挟まれた谷底のような通りには、光と影が混在していた。飲み屋が店を開けるにはまだ早い時間であるのに。
もう少し若ければ、店が開くのを待って、飲んで帰ったのかもしれない。
近くにはレゴストアも。
店の中までは入らなかったが、ショーウィンドウにあった宝塚大劇場や京とれいん 雅洛には暫し見惚れてしまった。
まだ幼い時分の娘の誕生日に、レゴをプレゼントしたことを思い出す。
ジェームズ・キャメロンの映画「アビス」のヒロインのエピソードが頭にあったからだろう。映画よりも先に読んでいたノベライゼーションの人物造形にいたく感激した挙句、同じような魅力を持った大人になって欲しいと考えた。
父親の身勝手な夢に過ぎない。
レゴに見惚れていた所為か、茶屋町口改札へ上る階段までもが、さっきのショーウィンドウの続きのディスプレイに見えた。
個展は10日間の会期。私が行ったときには、もう残りは3日。
ネットギャラリーで目に留まった小品は既に売れてしまっていた。しかし、大きな作品は実際に行って、前にしてみなければ、その空気感を味わえない。
ありふれた風景の写実であるのに、何故かそうは見えない。その秘密の一端は会場で頂いたフライヤーの文章からも知ることができる。
帰りの電車の中で読んでいて少しばかり涙目になった。
画家の思いに圧倒されてしまった所為もあるのだが。
私は目先の美しさや心地良さばかり追いかけてきた_そんなことを思った。
ネットで読む方が文字が大きくて読みやすいのだが、フライヤーの小さな文字を苦労して読むと、何か秘密を授かった気分になる。
デジタルではなく、アナログの紙媒体に還るべきなのかもしれない_少し前から気になっていたことを思い出した。
「しんしんとうとう」を久しぶりに眺めてみようと思った。