(続き)
阪神なんば線ドーム前駅にて。
イベントに興味のない私だから、これまでは常にパッシングスルーの駅だった。それが撮影がてら外歩きするようになって、俄然興味を覚えるようになった。だだっ広い空間に人がいない様子に何故ここまで惹かれるのか。初めて来たときには、ただならぬ気配さえ感じたものだが、さすがに何度か目にする内に、それは薄れてしまった。
みさんも駅の様子を見まわしながら、何事か小さく呟いたように思う。イベント開催時の、恐ろしいような数の人々を想定して作られているのは理解できる。それでも、昼日中、人工の明かりに満たされた影のない地下空間を眺めていると、何か言いようのない寂寞と荒廃を感じてしまう。
今日の私は、Brian Aldiss の "Greybeard" を思い返していた。
地下駅特有の風に吹かれている みさんの表情も、私の気分に沿ったものになっていた。