L'Étranger 1911120

たまさかの外出記録として

I don't call on them to come back. ONE

川と海

(続き)

Mark Tyner
Duality [Free Download]
https://soundcloud.com/marktyner/duality

水辺での撮影を考えて、川と海へ出かけた。
久しぶりの外出。光が眩しく、目に入るもの全てが美しく思えて仕方がない。
しかし、絶景や美しいものは、災厄と表裏の関係にある。
阪急甲陽線に乗り換えたあたりから涼宮ハルヒのことを考えるようにした。
電車の窓から「東中学校裏門」を眺める。
何十年かぶりでの苦楽園口。そこから川沿いに下っていく。
途中、左手にさくら夙川駅が見えるのを確認して阪神香櫨園駅まで歩いた。
時刻は未だ11時を過ぎた程度。
ホームの自動販売機の商品補充を行う青年の手順に見惚れた。しかし、カメラを向けるようなことはしない。
阪神魚崎駅で下車。六甲ライナーに乗り換えてマリンパーク駅まで行った。
阪神淡路の震災前には、大きなテーマパークがあった区画は、ただの草地になって放置されている。むろん、その中へ入って見ることは叶わない。
人工島の南端で眺めた海は、思ったよりも海面が高く、遊歩道にも潮の跡があった。
日陰のない荒涼とした広場の向こうに、同じく人工島のポートアイランドが見えた。
お洒落なカフェでビールとローストビーフのランチプレートを注文した。
静かなジャズが流れていたが、1時半を過ぎてから、若い女性客が多くなり、話声が大きくなった。
私とほぼ同世代の老夫婦が一組静かに食事していたのだが、早々に勘定を済ませて出ていった。

この撮影をした翌日の明け方、父と電話で話している夢を見た。
父は酔ってはおらず、比較的、機嫌の良い話しぶりだったが、何の話をしているのか、夢の中でもよく分かっていなかった。携帯電話での通話にありがちな、背後の混信も多く、適当な相槌を入れるしかなかった。それでも話は通じていたようだ。
夢の中でも思ったのだが、今頃、父は何を話したかったのか。亡くなって、もう20年近くが過ぎている。